会社が個人に支払った経費を「外注費」として処理を行ったとしても、税務調査で「給与」としてみなされ外注費としての取り扱いを否認される場合があります。そうならないために押さえておきたい業務請負契約の重要性について、税理士がやさしく解説していきます。
業務委託費を「外注費」として処理していても、契約形態によっては税務調査で「給与」として扱われ、消費税の仕入税額控除が否認される可能性もあるので注意が必要です。
業界団体の会合でちょっと面白い話を聞いてさ。その話が本当かどうか教えて欲しいんだけど。
どういった話でしょうか?
社員だった大工に個人事業主になってもらえば、色々面倒な手間が減る上に税金も安くなる、という話だったな。
「社員への給与」を「個人事業主への外注費」にするということですね。それは良く検討される話で、個人事業主への外注費になれば源泉徴収が不要になって手間も減りますし、外注費は給与と違って消費税の仕入税額控除を受けることができますから、結果として御社が支払う消費税の額も減ることになります。
そうなのか。じゃあ早速、うちで雇っている大工に話をして、仕事はこれまでどおり発注するから個人事業主になってくれるよう頼んでみるよ。
ちょっと待ってください。契約関係によっては、税務調査で外注費としての取り扱いを否認される可能性もあるため注意が必要です。
どういうこと?外注費として支払っていれば問題ないんじゃないの?
いえ、経理処理の勘定科目として「外注費」を使ったり、領収書等の名目に「外注費として」と書いたりするだけでは不十分です。
そうなんだ。具体的にはどうすればいいの?
税理士 国税庁が出している法令解釈通達である、「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」では、
①請負契約もしくはこれに準ずる契約を締結している場合、②雇用契約もしくはこれに準ずる契約を締結している場合、③区分が明らかでない場合、の3つに場合分けしており、①は外注費、②は給与、③は法令解釈通達に従って判断という処理をすることになります。
よって、外注費として処理するためには大工との間に業務請負契約を締結しておく必要があります。
業務請負契約の締結が必要ということだね。どうするか考えてみるよ。
これまで社員への給与として支払っていた金額を個人事業主への外注費として処理することができれば、源泉徴収の手間が減る上に消費税の仕入税額控除を増やすことができます。
一方で、業務請負契約を締結していないこと等が原因で、税務調査で外注費としての取り扱いを否認される可能性もあるため、外注費として処理しようとする場合は事前に税理士にご相談することをおすすめします。